ドーム工房：風雨樹木文花瓶

ドーム兄弟による円筒型の花瓶が入荷しました。四季で展開されたシリーズの春のデザインです。春霞に枝がしなるほどの風雨、さながら春嵐といった様相でしょうか。エッチングとエナメル彩を組み合わせた遠近感のある構図美しい作品です。当作品の特に印象的な部分としては「雨」の表現ではないでしょうか。エッチングによる浮彫で表現されています。ともすればエナメルで書いてしまいそうなものですが、ガラスの質感だけで「雨」を表現するとはさすがドームといったところでしょう。いぶし銀の表現です。

ドームの手がけた「春」の作品はどこか牧歌的でのどかに表現された作品が多いですが（プレリアルシリーズを筆頭に）、当作品はそれらとは対照的に厳しい自然界の悪天候が表現されています。どこかジャポニズムを感じさせるデザインは19世紀後期から流行した浮世絵の影響であるとされています。従来の西洋画には雨や雪などの悪天候下の風景は描かれないものでありましたが、当時の最先端のデザインを取り入れたのでしょう。

白色×薄桃色×緑色と3配色のバランスが非常に良く、円筒型の花瓶ならではの、どの面から飾って頂いても様になります。ドームの花瓶作品において、この円筒型の器型は当時人気を博していたのか、花や四季などの複数のデザインで展開されています。また、サイズも複数の展開があります。

コンディションも非常に良く、修復跡やチップ、クラックなども見当たりません。サインは作品底部にDAUM ロレーヌ十字 NANCYとエナメル彩で入っています。

【参考文献】

エルミタージュ美術館秘蔵　エミール・ガレとドーム兄弟 ～フランスからロシア皇帝への贈物～

発行：アートインプレッション cat.no.88 p152に同デザインの作品が掲載